寝る前に何気なくみたネットニュースで、この冬は鳥インフルエンザが国内で流行っていて、すごい数の鶏が「殺処分」されていることを知った同居人。なんでそんなに大量の鶏が一気に殺されなくちゃいけないの?「殺処分」ってどうやってしてるの?と疑問に思った同居人は、そこからいろいろ調べていくうちに、「アニマル ウェルフェア」…直訳すれば「動物の福祉」という言葉に出会ったんだって。
その言葉の意味は、家畜に心を寄り添わせ、誕生から死までなるべく心身ともに健康的な生活をさせる飼育方法を目指す畜産のあり方で、ヨーロッパの先進国ではだいぶ前から議論になっていて研究や法整備がすすめられているけど、日本はこの分野で先進国の中ではかなり遅れをとっているらしい。
冒頭で触れた鳥インフルエンザ対策の場合は、感染した鶏がいる養鶏場の全部の鶏と、場合によってはその付近にある養鶏場の鶏が殺処分の対象になって、そこには健康な鶏もたくさん混ざっている可能性があるからアニマルウェルフェアに反している。だけど、鳥インフルエンザは感染力が強くて鶏にも人にも感染するから、弱った鶏だけを選別している暇はなく迅速な対応が求められるということらしい。この場合の「殺処分」とは、生きた鶏を大きなポリバケツに入れて上からガスを注入して蓋をする方法で殺して、死体は地面に土葬して消毒用の石灰を撒く…ニュース番組で時々みる真っ白なあれは石灰だったのかと初めて知った同居人。
この時点で目が爛々としてきて、さらに調べ続けた結果、今度はさらなる衝撃の事実を知ってしまった同居人。アニマルウェルフェアが最も無視されているのは、家畜の中でも特に鶏。日本でも外国でも、雄のひよこは、なんと生まれた瞬間に殺処分されているんだって!数年前に、「ひよこミキサー」の動画が流行っていたのは知っていたけど、何かの間違いだろうと思って聞き流していた同居人は、普通にそれが社会の真実だったことにびっくりしたらしい。
生き残った雌のひよこについても、短時間で急激に体が大きくなるように無理やり品種改良されており、さらに充分に運動できない狭い環境で、足や骨が巨体を支えきれないほどの状態でケージに詰め込まれている場合が多いことも初めて知ったんだって。日本の場合、ケージ飼育している養鶏場は約9割で、その鶏の詰め込み具合はブラジルの倍近いという衝撃の事実を知ってしまって、ますます眠れなくなった同居人。ブラジル産の鶏肉は、国産の鶏肉の半額なのに…?
鶏の雄は卵を産まないし、雌に比べて成長も遅くて味もイマイチ→そのまま大きくなるまで飼っていても養鶏場の経営を圧迫するだけだから、殺す!
どうせ殺すのならなるべくお金や時間や手間をかけたくない→生きたまま圧死または生きたままミキサーにかける!
平飼いは、スペースもお金も手間もかかる→なるべくいっぱいの鶏をケージの中にギュウギュウに詰め込む!
ケージの中の鶏の密度が高いと、つつきあって傷がつく→つつけないように、くちばしを切り落とす!
短時間でたくさん肉がとれたほうがいい→より早くより大きく成長するよう、どんどん品種改良してどんどん出荷!
もっと!もっと!もっと!…人間の欲望は果てしないね。そういえば最近、農水相が卵屋さんから500万円の賄賂をもらったとかで辞めたけど、「土木工事関係じゃなくて卵屋さん?なんか珍しいな。卵の単価はすごく安いのに、それに比べると500万は結構高いよな~」くらいにしか思ってなかった同居人だったけど、この事件にもアニマルウェルフェアが関係してるんだって。今はオリンピック前で日本の食が世界から注目されているらしいんだけど、養鶏に関する国際的な取り決めを巡って、平飼いではなくて現在のケージ飼育を維持・推進したい養鶏場の声をその取り決めの中に反映させるための賄賂だったらしい。
思えば同居人も、鶏肉大好きで、安い卵や国産鶏肉があると喜んで買ってきたから、アニマルウェルフェアを語る資格は全然ないんだけど、せめてこれからは、高いけど平飼いの卵を買うことにしようと思ったんだって。同居人が隣人にこの話をしたら、隣人は「ぼびは幸せな猫だなあ…」ってしみじみ言っていたらしい。一方の同居人は、子ども時代にお祭りで買ったヒヨコから白い立派な雄鶏を育てたことや、茶色の雌の烏骨鶏を三羽飼って卵を産んでもらっていたことを思い出して、もう一度鶏を飼おうか本気で迷っていたよ。でも、ここは熊とか狐がいるから、ちゃんとした鶏小屋を作らないとね!