今、一年で一番庭が賑やかな時期なんじゃないかと同居人は思うらしい。なぜかというと、庭のあちこちに点在するサザンカや椿が花盛りだから。 それに加えて、馬酔木(アセビ、またはアシビ)が庭の一番手前で華やかに咲いているから。
馬酔木は、最初は名前もわからなかったけれど、同居人が二年前に移住してきた時にも確かに花盛りで、このスズランみたいな花はなんだろう?ってずっと気になっていたらしい。葉や茎に毒があるから馬酔木。古くから日本で愛されてきて万葉集にも詠まれているらしいよ。
で、どんな歌が詠まれているのか気になって調べてみたら、なんだかいっぱい出てきたんだけど、この決して派手な花とはいえない馬酔木からすごくドラマチックな歌がたくさん詠まれていることがわかって、想定外にドキドキしたんだって!例えばこんな歌…
我が背子に 我が恋ふらくは 奥山の 馬酔木の花の 今盛りなり
(あなたのことを密かに想っている私の恋心は、奥山に咲く馬酔木の花のように、まさに今真っ盛りなんです)
春山の 馬酔木の花の 悪しからぬ 君にはしゑや 寄そるともよし
(春の山に咲く馬酔木の花のように素敵なあなたとなら、そういう噂になっても私は構わないよ)
この二つの歌はいずれも、作者不詳。たしか、最初の歌は昔教科書に載っていたかも?というのも、同居人は以前この歌をきいたことがあるんだって。でもそのときは、馬酔木がどんな花かなんて全然知らなかったし、教えてもらった記憶もないらしい。作者不詳でも、両方とも馬酔木が絶妙に効いた、素敵な歌だよねd(^-^)
このように、馬酔木は万葉集にたくさん登場して、この花がいっぱい咲いた様子から「あしびなす」という枕詞もできたくらい愛されていたみたいなんだけど、時代が平安になるとより華やかな花が好まれるようになって、馬酔木への関心は下火になったらしい。歌は世につれ、世は歌につれ…だね!同居人によると、馬酔木には控えめな香りもあるんだって。万葉集の歌人好みの、清楚な香りらしいよ☆私も嗅いでみたいな~。